負けて勝て

行政職員とし在職していた今から10年ほど前に、公設の施設管理を委託していた、管理者の要望について協議することがあった。管理者から、村に対す要望だ出された。
私は、村長に対し行政の管理担当の責任者として「一般住民に理解されないことを特例として認めることは出来ないだろう。公平性に欠くと思われることは、言いにくいことでも言うべき」と村長に提言した。
村長は、目を閉じながら私の発言にじっと聴き入り「分かった。言われることは正しい。行政は、古川君が言うことが基本である。しかし、時には、いけないことと分かっていても、受け入れなければならないこともある。今回は”負けて勝て”の選択にしよう」。
納得いかない選択で、担当職員の努力にそむくことでおさまりかねたが、トップの決断であり従わざる得なかった。
住民の幸せにつながるのであれば、役所の決まりごとや前例主義に捉われない選択をすることが、トップに求められる。
協議の場に於いては、喧喧ごうごうで気まずさも残った。
後に、私が行政を退職し、観光交流施設の3セク経営の責任者になってからは、管理者に応援者になって頂き、度々訪れて頂いた。
他界される1月ほど前に「古川君、今日一杯呑みに行かないか」と声を掛け頂いたが、都合が悪く行くことが出来なかった。翌日に、入院され、退院されることなく他界されてしまった。
保身性を含んだ発言は不信を生むが、誠意ある議論は絆の深かまりを生む。