出雲の魚屋さん


今から5年前の春ごろ、道の駅ふぉレスト君田で魚を販売させて頂きたいと訪ねてきた。当時、私は支配人として話を覗い、毎週土曜日に限り販売することを許可した。
公共的サービスを担っている道の駅であり、営利目的にした出店に慎重に判断することが求められている。一度許可すと変更や解除に苦労してきた経験がある。
君田は山村であり、海の食材は利用者も喜ぶだろうと考えた。出会いの縁を活かし、地域だけでは提供できない付加価値を高めるサービスであった。
毎週の魚の出店が定着し、軽トラック保冷車を今か今かと待つお客さんで賑わうようになった。
魚屋の店主がなんとも太っ腹の方である。お客さんに「道の駅の喫茶店でコーヒーを飲んで行って」と料金を肩代わりすことが常であった。店主は、道の駅に還元することは当然のことであり、お金を回していれば、また、戻ってくる。与えることで人生は拓けるが口癖である。
魚屋の店主も、色んなことに気づかせてくれたり、勇気づけてくれた一人である。道の駅に関わりの中で出会った忘れられない人となっている。
今では、道の駅の販売より、家庭訪問の販売先が100軒近くになり、そちらの訪問が多忙とのことである。
君田や近郊の町の住民も、新鮮な海の幸と巡り合える日を喜んでいる。
店 主は「役所が絡んでいるような施設は、許可をしてくれないことが多い。お客さんが喜ぶ事であっても責任もって既成を越える事はしないものだ。古川さんが、 了解して頂いたことで君田などの住民と縁ができた。道の駅にも色んな形で還元させて頂きます。そして、最初の古川さんとの縁を忘れてはいけないと思ってい ます」。
断り続けているのだが、毎週土曜日に立ち寄られる。そして、食べきれないほどの魚を置いていく。時には、調理もしてくれる。
近所に、分け与え、喜ばれている。
店主とは、ギブ&テイクで野の幸と海の幸の交流が続いている。縁側に腰掛け、田園風景を観ながら、お茶を飲み、人生や子育て、職業観などに時を共にする。