書き続けた歓迎メッセージ25000通

「ようこそお越しくださいました。今夜は、世間の気ぜわしさを忘れ、心身のくつろぎの一夜としてお過ごし下さい」など、お客様一人ひとりの顔を想像したり、再訪に感謝したり、お客様の姿を想い浮かべ、お客様ごとに違う言葉で書き、部屋に置き続けた。
第3セクター経営の道の駅(温泉宿泊を併設の観光施設)の常務支配人に就任期間の5年間に、日々取り組んだ一つである。
多い時は、30通以上を書くことも珍しくなく、1時間から2時間を要する。
前日に自宅に持ち帰り、書くことも度々であった。
5年間で100字余りの一筆を25000通以上書いた。
お陰で、筆使いも上手になったように思う。
来客の70%がリピータで、一人ひとりのお客様の状況などを考え、想像し、感謝を伝えるようにした。
一筆のメッセージが縁となり、今もって付き合いをさせて頂いている方も多い。
サービス業は、自分の身に照らし、自分が喜ぶことをお客様にすることが最も基本である。
つまり、自分がされて、快くないことをしないようにすることでもある。
小さな心配りや思いやりが、末永い来客になって頂ける。
後任の支配人も、引き継いで書かれている。
3セク経営の創設や経営に関わった15年間を通じて、出会った人のお陰が、今の仕事の基盤となっている。
まちづくりの公共経営として、民間経営にはない地域との繋がりとしがらみの気苦労もあるが、多彩な人との出会いの機会が多い。
日々の一筆メッセージを通じて、人生を考えたり、人との関わりを振り返ったり、新サービスの企画を想像したり、とても貴重な時間であったように思う。
小さな努力の継続が、組織に頼らない一人歩き可能な人間を創ることになった。